仕事の帰り、何気なく歩いていると、数人のコたちから声をかけられた。
さすがオシャレな街銀座。
オシャレ感がにじみ出ちゃってたというか。
センスにはセンスが集まるというか。
溢れ出るオーラを隠しきれていなかったというか。
「名前なんていうの?」
「どこから来たの?」
「仕事はなにしてるの?」
とか聞かれてね。
おいおいおい、質問は一つづつにしておくれよ。
子猫ちゃんたち(^ ^)
悲しいかな、彼らは犬のおまわりさんだったのさ。
なぜにいっぱい人々が行き交うオシャレな街で僕だけが。
まあ、そうはいってもスーツをパリッと着こなした明らかにジェントルマンな僕ですから、単なる気まぐれで声をかけたであろうことは容易に想像できるわけで。
僕はかなりすまし顔で警察の職務質問に応じた。
僕「手短いにお願いしまs
犬「お仕事帰りじゃないですよね?」
えー!被り気味にー。
しかも明らかお仕事帰りの僕に、「何か違う目的でここにいるよね」感丸出しの質問。
強気にいこう。
だってここは渋谷じゃないから女子高生はいない。
だからパンツの覗き見もしていないはず。
いつもなら着けているネクタイ(ルーズソックス)もポケットの中のハンカチーフ(ルーズソックス)も今日はない。
今日に限ってはきちんと服だって着てる。
指さし確認してみたがいつもと違って全裸でもない。
いつもの「おちんちんにリボン付けたから正装です。ジェントルマンです」とかそういうことじゃなく、きちんと服を着ている。しかもスーツだ。
ここは堂々と仕事帰りであることを伝え、身の潔白を証明しようじゃないか。
不思議である。
おまわりさんに執拗に被せ気味の尋問を受けることで、自分は何もしていないという確信があるにも関わらず、つい詫びの言葉がこぼれてしまうのである。くぅぅ。国家の犬に!ワンちゃんごときに遜って溜まるものかと必死で自身に言い聞かせるが、ふと気づくと舌先に何かが当たっていることに気づく。
舌先にコツコツとおまわりさんの靴が当たる。
なんと僕の舌先はぺろぺろとおまわりさんの靴を嘗め回しているではないか。
10分ほどの尋問を受け、ようやく身の潔白が証明され、その場から立ち去れることが分かると新しい感情が湧き出てきた。さきほどまで憎らしく感じていた警察官から解放されたことから生じる感覚なのだろうか。
少しだけ警察官が「良い人」に見えるのである。
あれだけジェントルマンな僕を疑い、被せながらの質問を浴びせた警察官がである。
「気を付けて帰りなさい」
そういって立ち去った警察官の背中が見えなくなるまで見送った僕は、
「いつも平和をありがとう」と小さく呟いて帰路についた。
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